医事課 何を成すべきか

自部署のミッションの考え方、行うべきこと(即ち行わないべきこと)の切り分けの仕方について考察します。
医事課 何を成すべきか
Contributors (1)
YK
Published
Dec 01, 2017

私は今の病院に勤め始めて1年ほどです。

その前は病院の医療情報システムの導入や運用をお手伝いするパートナー企業にいました。

病院の外から病院の中に飛び込んだ時に感じた違和感は、もしかすると中にいる方にとっては意味のある刺激になるかもしれない と思って、その感覚を忘れないうちに、今偶然配属されている医事課というものを客観的にとらえ、テキストに残してみます。

病院には 「顧客」とか「ミッション」を考えることが実は多くありません。

病院自体が(ほかの業界に比べて)競争に晒されていませんし、その中でも病院内部の事務職員にとっては患者さんとも業者さんとも接しない場合があります。ちなみに、私が今いる部署がそうです。

一方で、(詳細は省きますが)複雑な組織であるために、指示や依頼はいろんな方向から飛んできます。ある意味、個人事業主のテナントと考えることもできますがそうではありません。 フリーランスの感覚でいると、お仕事を頂ける相手が顧客と考えることもできますが、ここでいう「指示や依頼」は報酬がありません。

病院によって、医事課の言葉や概念の範囲が異なると思うので、

このテキストでいう「医事課」の定義をしておきたいと思います。

算定、会計、請求、窓口、クラーク 等の、所謂パートナー企業に委託されることが多い業務は、省きます。

委託できない部分を行う、所謂バックヤード的な役割を担う部署 と想定してください。

さて、医事課のミッションとは?

ドラッカーの言葉にこういうものがあります。

「今の仕事が仮にないものだとしたら、新しく初めてでも行うか? その問いに対する答えがイエスでなければその業務を続ける価値はない。」

転じて、

自分の会社に、自分の所属する部署がなかったら、新しく作りますか? それはなぜですか?

この答こそが、自部署に求められるミッションだということができます。

さて、医事課はだれに求められて存在するのでしょうか。

もしあなたが、地域に医療を提供したくて病院を作ったとしたら、医事課を作りますか?

「どこの病院にもあるから」で毎年何千万円も人件費をかけるでしょうか。

医事課のミッションは 「売り上げの最大化」です。

医療者が行ったサービスを、なるべく多くの経済的価値に変え、次の医療を提供するための原資とする。

その循環の一部を、医事課がなかったら、誰かがやる必要があります。

明日からご自身の所属する病院がそうなったと想像すると、、 おそらく困るのではないでしょうか。

今や診療報酬関連のルールは複雑化して、専門の方でも判断に困ることも多くあります。

その難しい業務を「みんなでやる」より「詳しい人材を集めた部署」でまとめて行ったほうが、請求の制度が高くなり、つまり請求漏れが少なくなる と判断されるから部署として設置されるわけです。

経営者が、所謂売り上げを最大化するために医事課を組織するわけです。

これが医事課に課せられたミッションです。

病院は非営利組織だから黒字幅を大きくしてはいけない という誤解もありますが、

ここでいう「営利」とは、株主が得る配当金のことを指します。非営利組織は株主や出資者に配当金を出してはいけません。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%9E%E5%96%B6%E5%88%A9%E5%9B%A3%E4%BD%93

むしろ病院は提供した医療に対しては、ルールに則って請求を行う義務があり、勝手に割引くことを禁止されています。黒字幅を大きくして、それを次の医療を改善するために投資し、さらに良い医療の結果、経済状況をさらに良くする という正のスパイラルを回すことはあるべき病院の姿ではないでしょうか。 (国家全体の医療費の増大を案じて・・ はまた別の話になるのでここでは触れません)

さて、ここで医事課の業務を振り返ってみて、すべての業務がミッション達成に帰結しているでしょうか。

風が吹けば桶屋が儲かる ようなレベルまでバリューチェーンを辿っていけばすべて帰結するのでしょうが、

先の、この部署が発生した理由を鑑みると、いわばコメディカルのような位置づけで、なるべくコア業務に注力したほうがよいのではないでしょうか。

ミッションに直結した業務をコア業務、そうでない業務を非コア業務とすると、その割合はどの程度でしょうか。

そもそも医事課のコア業務とはどういうものでしょうか。

医事課の強みは、 事務部でありつつ、医療の内容に深くかかわっていることです。大半の事務部は医療のアウトカムから介入しますが、医事課は医療のプロセスから介入できる という強みがあります。そのうえで、直接医療は行わないため、客観的です。

ステージに立つタレントは、自分がステージを俯瞰できないため、演出家という係が必要になります。医事課も位置づけとしては同じようなものです。

医療従事者は、提供する医療のために譲れない部分もありつつ、客観的な助言を常に求めています。

医事課としては、売り上げの最大化のために、客観的な助言を常に行うことです。

他にも、取漏れがないようにチェックすることや、パートナー企業のパフォーマンスを上げるための取り組み、施設基準の届け出、監査などの対応などがあります。これらは詳しく言及しませんが、いずれも共通しているのが、ミッションに直接つながっていることです。

ミッションに直結しない業務は非コア業務です。

非コア業務を行っている時間はすなわち、コア業務を行っていない時間です。ミッション達成に直結しないことに時間を割くということは、つまり売り上げの最大化に不安が残ることになります。 非コア業務が発生するのはある程度仕方ないことですが、ミッション達成から遠ざかっていることを自覚したうえで行う必要があります。

(教育上の目的などで、あえて非コア業務を行うことも当然ありますので、それらを否定するつもりは全くありません)

また、コア業務であっても、余計なプロセスが付随していたりします。

90%の精度でよい統計分析を100%にするために3倍の時間をかけていたり、

2万円の取漏れを防ぐために丸1日かけてみたり

心当たりがありませんか?

余計かどうかの判断の一つの基準として、1人時間当たりの原価をお勧めします。

1人時間の原価の計算の仕方は、 税込み賞与込みの年収 ÷ 年間の稼働時間 ÷ 人件費率 です。

例えば、年収500万円、稼働日数240日/年、稼働時間平均10時間/日、人件費率50%でしたら、

5,000,000÷240÷10÷0.5で、4,166円です。 人件費率で割るのは、ものすごく単純化した原価計算です。

つまり、取漏れチェックに毎月10時間かけていたら原価は約4万円です。 2万円の取漏れしか見つからないのであれば、この時間は別のことに使うべきと判断できます。10万円の取り漏れが防げるなら、やってもいいかもしれません。

また、20人集まる1時間の会議、この原価は8万円です。その会議の結論にはそれだけの価値があるでしょうか。

繰り返しですが、余計かどうかの判断の基準の一つです。これだけにこだわるのもよくありません。

余計なプロセスが生まれるのはなぜでしょうか。

①業務に慣れたり、引き継ぐ等して、余裕ができる

②担当者レベルでの改善が行われ、質が上がる

③この質が最低ラインになる

④新しい業務が発生した時「現状でパンパンです。人が足りません。」

⑤人が増える  →①に戻る

こんなループがよく見られます。

原価の意識ないまま、真面目さにまかせて改善され、その質が認知されると、それが最低ラインとして固定されてしまいます。日本人の良いところでもあるのですが、ポイントは②の改善時に原価意識がないことです。チェックする立場の人も、真面目さに起因する改善なので、この部分のチェックが甘くなります。

生れてしまった余計なプロセスを後からやめるのは結構大変です。

対策としては、④のタイミングで、先述した「今そのプロセスがなかったら新しく初めてでも行うか? 費用対効果は高いのだろうか?」という視点で、コア業務の濃度を高める必要があります。

そして空いた時間で、コア業務の濃度を高めていければ、ミッション達成も近づくのではないでしょうか。

このテキストのタイトルにもある、「医事課 何を成すべきか」 の答えとは 売り上げの最大化 としています。

実際に最大化できたかどうかの検証はできるものではありませんが、

日々ルーチンをこなす医事課に対して、目的を忘れないでほしいというメッセージのつもりで書きました。

これが何かのお役に立てれば幸いです。

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