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Quality Indicatorを用いた質改善活動の進め方~聖路加国際病院における12年のノウハウ~

Published onNov 03, 2017
Quality Indicatorを用いた質改善活動の進め方~聖路加国際病院における12年のノウハウ~
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要旨

聖路加国際病院は1901年開設。東京都中央区明石町に位置する520床、標榜診療科37の急性期病院である。2005年より力を入れてきたQuality Indicatorを用いた質改善活動は、National Healthcare Quality Report(179指標)を読み解き、測定可能かどうかの精査から始まった。16名の委員でスタートしたQI委員会も、現在は78名の委員で活動を続けている。12年の継続の中で、質改善活動をどのように進めたらよいか、どのように仲間を増やしていくかのノウハウが身に付いた。

目的

Quality Indicatorを用いた質改善活動をどのように始めたか、どのように進めてきたか、聖路加国際病院のQI委員会の歴史とこれから、そして質事業の今後の動きについて報告する。

前提

聖路加国際病院は1901年開設。東京都中央区明石町に位置する520床、標榜診療科37の急性期病院。 職員数2,043名(2017年4月現在)。平均在院日数7.9日、病床利用率88.1%、1日平均入院患者数479名、1日平均外来患者数2,229名、手術件数9,713件、救急外来患者数46,104人(2016年)。

2005年に福井次矢院長が就任して以降、医療の質向上に力を入れ、2007年より質の評価と改善活動を一般書籍として発行してきた。2012年7月に国際的な医療施設認証機関であるJCI(Joint Commission International)の認証を取得した。さらに、2015年OECD(経済協力開発機構)の日本の医療の質レビューでは、「聖路加国際病院で実施している質指標プロジェクトは特に印象的であり、国全体で展開するロールモデルとなりうる」との評価を受けた。

背景

私自身は2005年4月に、新卒で診療情報管理室に入職、QI委員会の前進である診療情報解析システムWG内でQuality Indicatorについて検討がされ始めたのは2005年9月、正式にメンバーに加わったのは2006年1月からである。

その後、2010年7月より、日本病院会QIプロジェクトにも携わる機会を得て、2016年度より厚生労働科学研究費補助金/地域医療基盤開発推進研究事業の医療の質指標に関する研究に携わっている。

アプローチ

QI委員会の進め方は、以下の5つから成る。

  1. 指標の選定

  2. 指標の測定

  3. 改善策の検討

  4. 改善策の実施

  5. 再測定からの評価

しかし、本当のスタートは以下の流れで行った。

  1. National Healthcare Quality Report(179指標)について、測定可否の精査

  2. 測定可能な指標について、データ作成

  3. アンケートおよび診療科へヒアリング

  4. 指標選定およびデータ作成

  5. 医療従事者向け冊子発行

その後、2007年度より、QI委員会ではモニタリングする指標を選定し、毎月結果を報告、改善に向けた活動を行っている。

結果

QI委員会の活動の成果として、2007年より毎年書籍を発行するようになった。また、2005年度発足当初は16名の委員であったが、現在は78名の委員により毎月委員会を行っている。 QI委員会でフォローする指標数も2007年度の9項目から現在は約90項目を測定し、改善活動を行っている。

12年続けてわかったこと

組織としては、
指標は、科学的な根拠があること、データが継続的に取得できること、データの精度が高く現場に受け入れられやすいこと、現場の負担にならないこと、開始時点では値が高くなく改善可能であることといった項目を選択することが望ましい。また、個人や特定の部署が不当な評価にならないよう病院全体等から始めるのがよい。 体制としては、リーダー(病院長)が舵取りをしている施設はスムーズに進む。平成28年度の研究班調査からも測定・公開することが医療者・患者双方によい影響があると回答した病院管理者のほうが悪い影響があると回答した病院管理者より多かった。まずは組織としての体制を整え、仲間を増やしていくことを推奨する。

個人としては、
開始時点では国内で公開されている指標がなく、諸外国が公開しているモデルレポートを調べ、測定可能かどうか精査することに時間を要した。また、ヒアリング時の「QIとは何か?」の説明を続けること、協力的ではない職員に対してどのようにすれば協力してもらえるかを考え、実践することに苦労した。 しかし、継続することで、現場から指標の提案が届くようになり、さらに改善が見えてくると、活動を続けている甲斐があると感じられる。

議論の残る部分

毎年測定する指標が増加していくため、どのように扱っていくかは継続して検討する必要がある。 今後、国として、臨床指標の測定がなされる可能性がある。

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